希望に縋ろうとした負け犬が、怪光線を発射

 久しぶりにトンデモな夢を見たので、嬉しくて思わず朝っぱらから長文書いてしまいました。お暇なときにでも、どうぞ。後に行くほどトンデモで、しかもメタフィクションに突入していきます!!(くだらないですけどね)
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 僕達は、高校の制服を身にまとっていた。であるからには高校生という設定なんだろうな……きっと。
 ある放課後に友人の部屋に招かれた僕は、そこでとんでもないフィルムを見せつけられてしまう。学内ショートフィルムコンテストに出品される予定の作品だ。僕はそいつのことを内心みくびっていたので、大いに焦らされてしまう。(俗情と結託してるし、またいつものこのパターンだし、ださすぎだろ)水面下で精一杯の批判を試みるも、その作品が抜き差しならない基準に達してしまっていることを僕は遂に認めざるを得ない。こちらが才能を過信してサボっている間にも、こいつは地道に努力を続けてきた。その結果が、ここに両者の違いとして表れてきているのだ。
 教室に帰ったところで、僕はバカの佐藤からテストの答案を見せびらかされた。見てよ99点! あと一点……おしいなあぁ〜と彼は大層自慢げにしている。ついこないだまで赤点の常連だったくせになんだよその急変ぶりは。ちょう感じ悪ぃ。しかし、そこへいくと僕なんてダメだ。勉強漬けの生活のおかげで精神が破綻してしまって、もはやまともにテキストに向かい合うこともできなくて、成績は落ちていく一方なのだ。肌寒い秋風は、間近に迫ってきている受験当日を僕に示唆してやまない。どうすればいいんだ、と焦燥感に駆られる。もうだめだ。。。
 そのとき僕は、廊下側の五番目の席にあの子の姿を発見する。僕はあの子の存在に救いを見出す。あの子を目撃するのはこれが初めてだが、前世からの因縁だか別の物語の恋人どうしだったか何かで僕はあの子のことを知り尽くしている。近寄っていって、あの子の姿をまじまじと眺めてみる。細かいパーマがあてられた髪の合間には、エクステンションか何かみたいな金色の毛筋が定間隔で交えられている。これ、染めたのと僕が聴くと、「うん」と彼女はうなずいた。全体としては古代エジプトの王妃みたいな髪の毛だったけど、毛先が軽くて流れが作ってあって、今風にアレンジされていてとても可憐だ。それでいて、白い冬服のセーラー服を崩さずに着こなしているあの子は、内面からにじみ出てくるような気品を携えているのだった。喩えがマニアックで恐縮だが、Pico☆Picoに出てくるセクタノヒメ桃儀みたいなちょっと不思議な雰囲気を醸しだしていた。
 なにをそんなに勉強しているのだろう、あの子は机の上にテキストをうずたかく積み上げていた。あの子と僕とは恋人同士という設定なので、僕はあの子のすぐ側に立ち、指先でそのきれいな髪の毛をくしけずってみる。けれど彼女は、なんだか気まずそうに下唇を噛むばかりだ。「きれいだね」「すきだよ」と僕はぎこちなくも思いを告げていく。彼女はその言葉に応えてくれようとするんだけど、少しも会話が噛み合っている気がしなくて、段々とこちらも気まずくなってくる。そこで僕はその場を挽回しようとして、「こんなに素敵なのはきみだけだよ」という超クサいしかも嘘くさい台詞まで口にしてしまった。
 一連の様子を、あの子の友達二人が見守っている。その人達も怖ろしく素敵な女子で、まるで彼女たち三人だけが別世界から降りてきたみたいだった。なので僕は前言撤回。「ウソウソ、みなさんも素敵ですよ」とフォローを入れる。友人たちは嬉しそうにしてくれたが、僕はなんだかよくわからない系のキャラになってしまっている。
 そのとき、ついにあの子がキレた。「きらい、最低、いなくなって!!!」という凄い剣幕。ガ〜ン嫌われた。僕はもうたぶん、二度と一生立ち直ることはできないのだろう。
 そこへあろうことかバカの佐藤がやってきて、テストの答案を再び見せびらかしてくる。見てよ99点! あと一点……おしいなあぁ〜と大層自慢げ。二度も見せびらかすなよ鬱陶しいクソバカの佐藤だな。
 その回の放送はその最悪なシーンで終了。エンドロールが流れはじめようとしているのがわかったので、僕は慌てて後ろの入り口から教室を飛び出した。エンディングなんかにまで付き合ってやる気はさらさらない。こんな場所からはいなくなってやる。躊躇う理由なんてない。あの子だって、それを望んでいるじゃないか。
 前の入り口を通過しようとすると教卓には先生がいて、ホームルームなんかを開いてまとめに入っている様子が窺えた。教室の上半分の空中にはコミカルなアニメーションが踊っており、スタッフとかスタジオとかの名前がエンドロールで流れてきている。なんだこいつら勝手に完結しやがって! 僕はイライラがやまない。イライライライライライラしてくる。なので、入り口の半分開いた引き戸にもたれかかって体重をあずけ、木でできたサッシをポケットの中にあったドライバーで激しく突く。突いて突いて、ガリガリと削っていく。……突くと引っ込んでしまうような、情けのないおもちゃのドライバーで。
 それにも飽きてきたので、僕はとうとう教室を離れることにした。正面に無限の奥行きを誇る真白い廊下を、僕は数㎞にわたって駆け続けてゆく。逃げてゆく。逃げれば逃げるほどに、そうすることが致命的な間違いであるという事実を、僕は痛々しいほどクリアに理解しはじめる。しかしそれでも……逃げてしまう。逃げずにはいられない。僕はグズで弱虫で、もう本当にどうしようもない人間なのだ。そう、あの子の言う通り、まさにいなくなるべき人間に違いないのだ。
 すると追っ手がやってくる。そいつは人間を模した木偶人形で、通称は”博士”。博士の脇には弟子のクリリン。「戻るのじゃ保ふ山! カムバック保ふ山、カムバァァーーーック!」「わかったよ、老師!」博士なのか老師なのかよくわからない木偶にあっさりと諭され、僕はその場で180度ターン。
 「ピ・ッ・コ・ロ……波ッ!!!」
 ピッコロ波を後方に発射することで、僕はとんでもない速度で教室に向かって飛んでいく。ピッコロ波だなんてちゃんちゃらおかしくて、口元がどうしても緩んでしまう。声は野沢雅子のそれ(エコー付き)だったし、どう考えたってかめはめ波だろうここは。
 その時点で、僕はようやく気付く。どうやらこの場所では、シニフィエシニフィアンとの対応関係が出鱈目にこんがらがってしまっているらしいのだ。
 教室に辿りつくと、僕が留守の間に世界は一回滅亡してしまったらしくて、密林の中を曲がりくねった濁流が流れているというとんでもない状況だった。蔦をかき分けつつ、押し流されてしまわないよう、懸命に両脚を踏ん張りながら僕は濁流を遡っていく。すぐ脇には開けた草地があって、サイヤ人のアーマーを身につけた食用のベジータが二匹うろついている。ベジータの脇にもよくわかんない家畜がいるわけだが、心底どうでもいい。濁流を遡った先には光があって、光のなかにはクラスのみんなの避難場所があって、あの子がいる。それは僕にとっての希望であり、喜びそのものなのだ。懸命に両脚を踏ん張りながら、僕は濁流を遡っていく。