神秘の国ネパールへ


今日からちょっとずつ、ネパール旅行の時の写真をアップしていきます。何やかやと盛りだくさんでした。
旅行の最初の十日間くらいはまめに日記をつけていたので、それを元に文章を起こそうと思っていたんですが、日記を失くしてしまった。帰ってきてからデニーズで開いたのは覚えているので、デニーズの人なら何か知っているかもしれないので、デニーズで聞いてみようと思います。
写真は韓国の仁川国際空港。露出を間違えたため、全体的に暗いです。それにこの文章からも滲んでいると思いますが、なにごとかを語り伝えようという、意志と誠意がまるで感じられない。なにとぞ最後までお付き合いください。

6月14日 韓国

大韓航空の格安航空券を入手したため、行きと帰りに必ず韓国で一晩明かさなくてはならなかった。仁川からネパールへは週に一便。一人で飛行機に乗るなんて初めてだし、英語が全く喋れないし聞けないので、最初から大ピンチでした。着替えなどを詰め込んだバックパックがネパールに直送されてしまったりとか、よく考えたら冷や冷やものです。
「Excuse me. My buggage is missing.」

東大門市場(トムデムンシジャン)

漠然とソウルの中心地に行きたいというだけで細かいことは特に決めていなかったので、最初にやってきたリムジンバスの行き先である東大門に行くことに。

東大門は、業者向けの卸し市場らしいです。薄暗いアーケードの下で露天が売り場を連ねているんだけど、とにかく販売スペースに詰め込まれている売り物の密度と物量が尋常じゃない。

変な枕を買わされそうになった

その日の宿は地球の歩き方を見て決めていたんですが、歩いても歩いても一向に見つかりません。地図に乗っている町並みと実際の景色とが、いまいち照合しない。地図か街の、どちらかが間違っているんだと思います。見つからないまま同じ道を何度となく往復しているうちに、疲労のあまり鼻血が出てきました。
すると親切そうなお爺さんが、「どこへ行きますか?」と日本語で声をかけてきました。泊まろうと思っていたモーテルの名前を伝えると、連れて行ってあげますよということになった。渡りに船です。
しかし、辿り着いた場所は全然関係のないゲストハウスだった。お爺さんはゲストハウスの人をひとしきり困らせた後、「ここ高いね、よくない」と言って、今度は俺を自分の家に連れて行きました。
庭先には、手編みらしい籐の枕が積み上げられています。
「これあげる。安いよー」
と言って、枕をビニール袋に詰め込み、こちらに手渡してくる。
「いりません」
「いいから、あげます。安いよ」
突き返そうにも、「さあ行きましょう」とお爺さんはどこかに行ってしまいます。
俺が慌てて追いつくと、
「たくさん歩いて、足が痛くなってきた。枕あげます。安いよ」
何を言っているのかわかりません。
とにかく様子が変なのです。
(このお爺さんは初めから、馬鹿そうな観光客に、枕を売りつけるのが目的なんだ…)
俺は今頃になって、ようやくそのことに気がつきました。

困惑するこちらを尻目に大股でズカズカ歩いていって、お爺さんはでも、今度は本当に目的地のモーテルに連れてきてくれた。玄関のドアを開けて無遠慮に踏み込むと、「ヨボセヨ!ヨボセヨ!」と何かを叫んでいる。
「ヨボセヨー!」
返事はありません。
「誰もいないね」
「そうですね。まあいいや。あの、ちょっと用事を思い出したので、そろそろ行かないと」
俺はもう全部が嫌になっていて、こんなやり取りは早く終わらせたいと思っていました。
「沢山歩いて、足が痛いです。枕買ってください」
「お金ないです。それに、枕はいりません。ホテルに泊まるのに、なんで枕…」
枕を突き返そうとしましたが、お爺さんはそれを受け取ろうともせずに、
「もっといいホテルあるよ」
と言ってまた先に行こうとします。強く出ないと、相手のペースにどんどん巻き込まれてしまう。多分それが、お爺さんの作戦でもあるのです。
だから俺はその場から動かず、
「もう行きます。枕はここに置いておきます」
と強い口調で言わざるを得なかった。
俺が怒っているのを見たお爺さんは、困ったような顔をして、タバコをせびり始めました。タバコくらいあげてもいいと思ったんだけど、タバコを持っていなかったので、そのことを告げると、お爺さんは本当に悲しそうな顔をしたのでした。
歩きすぎて足が痛くなったお爺さんは可哀想ですが、俺は目的のモーテルに宿泊することができたので、本当にラッキーです。その日は、本当に気持ちよく眠ることができたのでした。